リチウムイオン二次電池の安全性と対策
リチウムイオン二次電池は金属リチウムを用いないため、リチウム二次電池より安全に充放電できるように設計されている。しかし、リチウムイオン二次電池の危険性は、エネルギー密度の高さの裏返しであり本質的な問題でもあるため、電池そのものにも周辺回路にも様々な安全対策が施されている。これらの安全対策は特許公報などにより知ることができる。
こうした対策にもかかわらずノートパソコンや携帯電話において異常過熱や発火などがしばしば報告される。製造工程上の問題が疑われ、大規模な回収に繋がった例もある。具体的な事故例についてはリチウムイオン二次電池の異常発熱問題を参照のこと。
市販形態
利用法によっては発火・爆発する危険性があるため、市販時には複数の安全機構を内蔵した「電池パック」として供給され、マンガン電池やアルカリ電池のように電池セル単体の製品は市販されていない。ラジコン等のホビー用途の電源として、電子的な安全回路を持たない物が市販されているが、高価な専用充放電機での使用を前提としており、強固なケースに収められている。
例外的に、電子部品専門店などでは一般向けに電池セルを販売しているが、保護回路や短絡防止策を講じないで使用することは危険を伴う。また、ユーザーが電池パックを分解することは非常に危険である。
日本国内のウェブショップでは日本製と海外製の電子的な安全回路を内蔵した製品と電子的な安全回路を持たない製品が市販されている。主に18650/17650/14500/10440等が電池セル単体で、入手が可能である。
構造上の対策
内部短絡などで温度が上がり、内圧が上昇した場合には電流遮断機能付き安全弁を内蔵することで爆発を予防している。この安全弁は正極の凸部にあり、一定以上の圧力がかかるとガスを外部に放出する。また、円筒形電池のトップカバーには、温度上昇により内部抵抗が増大するPTC素子が内蔵されており、温度上昇が起こった際には電流を電気的に遮断する構造になっている。
- その他に、
- ・電池素子の中心にステンレス製のピンを入れて缶の折り曲げに対する強度を高める
- ・電極のタブその物やタブ取り付け部に絶縁テープを貼りタブのエッジからの内部短絡を防止する
- ・電極の巻き始め・巻き終り部全体に絶縁テープを貼りデンドライトの発生を抑制する(デンドライト形成には、リチウム金属だけでなく、アルミ箔などに含まれる不純物の亜鉛などの析出が原因となることもある)
- ・微小セラミック粉を電極やセパレータの一部あるいはほぼ全域に塗布し絶縁層の強度を上げる。 などの様々な方法を用いてメーカーは安全性の確保に努めている。
保護回路
充電電圧の過充電制御は充電器だけでなく、電池パックにも制御回路を備えて管理している。また、過放電に対しては電池パック内の制御回路により、過放電状態にいたる前に出力を遮断する。
使用上の注意
長持ちさせるために留意すると良い点を記す。
- ・高温での使用・保管は劣化が早く進み、電池に回復不能な損傷を与えるため、充電しながら使用をしたり、温度の高い場所に放置する事は良くない。ラップトップPCなども放熱に気を付ける。
- ・高いセル電圧は劣化を招くので、満充電の状態で長期間放置すると容量が減る。携帯電話やラップトップPCの一部には満充電を防ぐ設定ができるものもあるため、その設定を利用する。
- ・安全上の為、リチウム電池交換式ライト(例:ソーラーライト電池交換式TYHシリーズ)は必ず定期的に(目安1年半ほど)搭載のリチウム電池を交換してください。
リチウムイオン電池の設計寿命の繰り返し回数500回を超過した場合は、リチウム電池自体の保護装置機能が低下し、充放電の各機能が設計基準値より下回る懸念性がございますので継続的なご使用をお勧めしません。
設計寿命より大幅に上回るご使用や不適切なご使用方法等によるいかなる事故が発生した場合は、弊社が責任を負わないものとします。 - ・1C以上での急速充電は負担をかけるので避ける。急速充電は通常の充電に比べて効率が落ちるため、その分熱が発生する。
- ・SoC(State of Charge)が低い間の急速充電はあまり寿命には影響しないが、充電が進むにつれ充電の速度を落とさなければ寿命が縮む。Appleの充電方式では80%までを急速充電し、その後は充電の速度を落としている。
- ・放電深度(DoD; Depth of Discharge)を低くする。例えば、完全放電(0%)と完全充電(100%)とのように使用するのではなく、25%から75%の間で使用する。ただし、ときどき完全放電と満充電のサイクルを行い、バッテリーの容量を制御回路に記憶させる。
- ・長期間使用しないときは、ときどき充電して過放電に陥らないようにし、低湿度かつ低温で保存する。Appleによれば、50%での保管が推奨される。